第8章 夏休み2
「あの、そもそもなんでニノはあなたたちの所に?」
「ああ、そうよね。それを説明しないとね」
気になっていたことを尋ねると、お姉さんが簡単に経緯を説明してくれた。
ニノがしつこい男たちに絡まれていたこと。
偶然通りかかって、見かねて助けたこと。
戻りたくないと言うから、放っておくことも出来ず自分たちと一緒に居させたこと。
ジュースと間違えて酒を飲んでしまって、途中で寝てしまったこと。
男に絡まれていたと聞いた瞬間に翔の顔が強張ったが、口を挟むことはなかった。
「カズを助けていただいて本当にありがとうございました」
話を聞き終わると翔が頭を深々と下げた。
「可愛い子が困ってたから放っておけなかっただけよ」
気にしないでとお姉さんは笑う。
「1人でいたら危ないからお友だちの所に戻るように言ったんだけどね、ニノくんがまだ戻りたくないって言って」
「戻りたくないって···なんで?」
智がショックを受けたように呟く。
「自分が勝手に落ち込んでるのにみんなに心配掛けちゃうからって、自分のせいでみんなが楽しめなくなっちゃうって言ってた。だから気持ちを切り替えるまで戻れないんだって」
「そんなの···飛び出して急にいなくなる方が心配だよ···ニノのばか」
俯く智の頭を、励ますようにポンポンと叩く。
「カズは何をそんなに落ち込んでたんでしょう?」
心配そうな翔に、お姉さんは少し呆れたような目を向けた。
「翔ちゃんて鈍いの?」
「は?」
「ニノも翔もお互いにかなり鈍いんですよ」
訳の分かってない翔の代わりに俺が答えた。
この感じだとニノが色々喋ったんだろう。
2人の関係も分かってるんだと思う。
「そんな感じね」
お姉さんはどこか楽しそうだった。