第8章 夏休み2
「いないな」
探しても探してもニノは見つからない。
確認してもテントにも戻ってないみたいだし、翔も智も心配の色がどんどん濃くなっている。
「アナウンス頼んでみるか?」
「迷子のやつ?」
「そう。もうそれくらいしかなくね?」
ニノが聞いてるかは微妙だけど、やらないよりはいいんじゃないだろうか。
「あーもう!ニノどこ行ったんだよっ!」
智がやけくそのように大声を出した時
「今ニノって言った!?」
近くにいた女の人が振り返った。
「もしかしてニノくんのお友だち?」
「えっ!?」
突然ニノの名前を出されて驚いた。
何だ?全く知らない人だよな?
「ニノって、あの···」
「前髪ポンパドールで白いラッシュガード着て、色白でお目目ウルウルの可愛い男の子」
「カズだ!」
お姉さんの説明に翔が食いついた。
「もしかして···誰かが“翔ちゃん”?」
「え···なんで?」
突然名前を呼ばれて翔が目を見開く。
「あなた?まぁ、ニノくんたら面食いね」
お姉さんはふふっと笑うと
「突然ごめんなさいね。もしかしてニノくんを探してたんじゃない?」
ちょっと真顔になった。
「そうです!あの、カズ···ニノがどこにいるかご存知なんですか?」
「ああ、やっぱり。会えて良かった!ニノくんは私たちの所にいるわ」
嘘をついているようには見えない。
でも見ず知らずの人を信じていいのか?
迷ってる間にも、来てくれる?と言われて翔も智もついていってしまう。
俺も仕方なく後に従った。
「お友だちが心配してると思ってたんだけど、今ニノくん寝ちゃってて···ニノくんの本名も分からないし、連絡方法もなくて···ごめんなさいね」
「寝てる?」
「ニノくん間違えてお酒飲んじゃったのよ。私たちも気付かなくて···ごめんなさい」
お姉さんは何度も謝ってくれる。