第8章 夏休み2
急いで戻ったテントにカズはいなかった。
智くんもいない。
入れ違ったか?
辺りを見回していると、智くんが走って戻ってきた。
その顔は焦っているように見える。
「翔くん!ニノ見た?」
その声にも焦りが滲んでいて
「カズがどうしたの?元気がないって聞いて戻ってきたんだけど···」
智くんの様子に不安になる。
「急に飛び出して行っちゃって···見失っちゃったんだ」
ごめんと智くんの眉毛が下がる。
「飛び出したって···何で?」
「それが突然でよく分からなくて。頭冷やしてくるって言ってたけど」
頭を冷やす?何かあったんだろうか?
「ニノなんかすごい落ち込んじゃってて···」
「何かあったの?」
「何かっていうか···」
智くんは口ごもって俺をじっと見つめた。
「何?俺には言えないようなこと?」
「そうじゃないけど···」
歯切れの悪い返事にますます不安になってると
「そんなことより、ニノ探すのが先じゃない?」
いつの間にか後ろにいた潤に肩を叩かれてハッとした。
「まぁ、男だし小さい子どもじゃないし大丈夫だとは思うけど。でも心配でじっと待ってられないだろ?」
「当たり前だろ!探しに行かなきゃ!」
「待て待て」
すぐに走りだそうとしたのに、止められる。
「何で···!?」
「智、ニノ携帯持ってってないの?」
「持ってないよ。カバンに入れっぱなし」
「やっぱそうだよな」
焦る俺と違って、潤は冷静で
「翔、携帯持って」
自分もスマホを取り出すと、荷物番のやつにカズが戻ってきたら連絡するように頼んでテントを出た。
「じゃあ行くか」
「え?潤も行くのか?」
「そんな焦ってるお前1人じゃ見つかるもんも見つからないだろ」
「俺も行く。ニノが心配だから」
当然のように潤と智くんも一緒についてきた。
「ありがとう」
「なんでお前が礼を言うんだよ」
潤に笑われた。
「トモダチなんだから当たり前だろ」
男だし···なんて言ってたけど、潤も心配してるんだろう。
俺は、この瞬間にもカズが変なやつに捕まってるんじゃないかと思うと気が気じゃなくて。
焦る心を何とか抑えてカズを探し始めた。