第8章 夏休み2
「あの、本当にありがとうございました」
「いいのよ。でも可愛いんだからフラフラしてたら危ないわよ?まさか1人で来たわけじゃないでしょ?」
心からの感謝を込めて頭を下げたら、にっこり笑って注意された。
「友だちと···でも···」
まだモヤモヤした気持ちが残ってる。
こんなんじゃまだみんなのところには戻れない。
「ケンカしちゃった?迷子じゃないでしょ?」
「ケンカでも迷子でもないけど···」
「戻りたくないの?」
黙って頷いた。
そしたらお姉さんたちは目配せし合ってから
「じゃあ私たちと一緒にいる?」
「1人でいたらまた変なのに捕まっちゃうよ」
「美味しいもの食べさせてあげるね」
そう言って、俺を自分たちのテントに連れてってくれた。
「あなた···えっと、なんて呼んだらいい?」
「······ニノ」
名前を聞かれたわけじゃないからフルネームを答えるのは気が引けて、ニノって呼んでもらうことにした。
「ニノくんね。ニノくんは高校生?中学生?」
「高校生!」
「あはは!ごめんごめん!ニノくん可愛いから~」
お姉さんたちはOLさんで。
OLの女子会に男子高校生が1人紛れてるって絶対おかしいと思うんだけど。
「ニノくん可愛いから全然オッケーよ」
「戻りたくなるまでここに居ていいからね」
みんな優しく迎え入れてくれた。
海の家で買ったらしきものと、手作りっぽいものと、たくさんのご飯を取り分けてくれて。
それをモグモグ食べながら、お姉さんたちの会話を聞いていた。
仕事の愚痴や、上司の悪口。
ダイエットに恋愛に結婚に···話は尽きないみたいでずっと喋ってる。
もう泳がないからとお酒も飲み始めたお姉さんたちのお喋りの勢いはすごくて。
圧倒されっぱなしだし、話題もポンポン変わるから、正直ついていけてない。
でもみんなすごく明るくて楽しそうで。
一緒に笑ってたら、モヤモヤも少し晴れてた。