第8章 夏休み2
ーNsideー
次から次から女の子たちが寄ってくる。
飴に群がる蟻みたい。
翔ちゃんも潤くんもカッコいいもんね。
声掛けたくなる気持ちは分かるよ?
でもさ、すごーく迷惑!!
翔ちゃんは真面目だし優しいから、声を掛けられるとちゃんと相手をしちゃう。
全部断ってるんだけどさ、優しく対応しちゃうから相手もなかなか引かないの。
潤くんがうまいこと追い払ってくれてるけど、キリがない。
それを俺はただ見てるだけ。
何も出来ない自分にイライラする。
頭の軽そうな女が馴れ馴れしく翔ちゃんにすり寄っていく。
やめて!翔ちゃんに触らないで!
俺の翔ちゃんなんだから!
そう叫びたいけど、そんなことできない。
だって俺の翔ちゃんじゃないから。
俺はただの友だちだから。
翔ちゃんだってさ、断るならもっとビシッと断ればいいのにな···
困った顔してるけど本当は嫌じゃないのかな。
女の子たちに言い寄られて嬉しいのかも。
翔ちゃんも男の子だもんね。
可愛い女の子が好きなんて当たり前だよ。
当たり前だって思うのに···
俺のことを全く見ないで女の子といる翔ちゃんの姿にだんだん悲しくなってきて。
苦しくてそれ以上見てられなくて、逃げるようにテントに戻った。
でもそしたらみんなに心配掛けちゃって。
何やってるんだろう俺。
ただの片想いのくせに勝手にヤキモチ妬いて、落ち込んで、みんなに心配掛けて。
海なんて来なければ良かった···なんて、ますますネガティブになってしまう。
智に愚痴りながら、これじゃ良くないと思う。
せっかく海に遊びに来てるのに、俺のせいでみんなまで楽しめなくなっちゃうよ。
みんなを俺のネガティブな感情に巻き込んじゃダメだ。
少し1人になって頭を冷やそう。
そう思って、テントを飛び出した。