第8章 夏休み2
ニノの目から今にも涙が溢れそうで焦る。
「どうしたの?」
「やっぱり翔ちゃんだって隣にいるのは女の子の方がいいよね」
なるべく優しく聞いたら、ニノは瞳を揺らしながら小さな声でそう言った。
「は?」
「翔ちゃん嫌がってなかったもんね」
ええっ!?
翔くんあんなに迷惑そうな顔してたじゃん!
ニノは一体何を見てたんだよ!
「女の子可愛いもんね。翔ちゃんだって男だもん···それが当たり前だよね」
いやいやいや!
言っちゃなんだけど、翔くんに言い寄ってた女の子たちよりニノのが可愛かったし。
そもそも翔くんはニノしか見てないよ。
そんなことで悲しくなる必要なんてないよ?
言いたいことはたくさんあるのに、翔くんの気持ちを知らないニノには言えない。
翔くんの気持ちはバレないように隠しつつニノを励ますなんて、そんなこと口下手な俺には出来そうになくて。
言葉に迷って口ごもってたら
「変なこと言ってごめん。頭冷やしてくる」
突然ニノがテントを飛び出して行ってしまった。
「えっ···ニノ!待って!!」
急過ぎる行動に反応するのがワンテンポ遅れてしまった。
こんなところで、あんな可愛いニノを1人にしたら危ない気がする。
何があるか分かんないし。
そうじゃなくても気持ちが不安定になってそうな今のニノを1人にしたくない。
慌てて追い掛けたけど、俺が外に出た時には既にニノは人混みに紛れて見えなくなってた。