第7章 夏休み 1
ーMsideー
翔がニノを連れてさっさと帰ってしまった。
確かにニノはまだ赤い顔してたけどさ、翔が抱きかかえるようにしてたせいもあるんじゃね?
本当、ニノに対しては心配性というか過保護というか。
まぁ、俺もね。
まだバスケをしたいって言う智を1人残せなくて、一緒に残ってるんだけどさ。
みんなして智を可愛い可愛い言ってるからね、何となくね。
雅紀だっているし、別に心配するようなことはないんだけど。
···翔の心配性がうつったかな。
雅紀は雅紀で、また切ない顔で翔とニノを見送ってて。
見てるこっちまで切なくなるっつーの。
でもこればっかはなぁ···
どうしてやることも出来ないからな。
両想いになれるなら、それがいいに決まってるけど。
ニノが翔を好きなのは誰が見ても分かるし、そんなの雅紀だって知ってる。
そもそも本人から打ち明けられたらしいし。
雅紀が自分で気持ちに折り合いつけるしかないよなぁ。
「雅紀、もう一勝負しよ?」
智が労るような励ますような、優しい目をして雅紀の肩を叩いた。
「よーし!翔くんはもういないし、次は負けないよ!」
パッと顔を上げて大きく伸びをした雅紀は、振り向いた時にはもういつもの顔に戻っていた。
今俺に出来るのは、変わらないいつも通りの態度を貫くことくらいかな。
「翔がいなくても負けねーし」
「潤って負けず嫌いだよね」
そう言って笑った智も、十分負けず嫌いで。
勝てばご機嫌なのに負ける度にムキになって、結局ヘトヘトになるまでバスケを続けた。
疲れて汗だくになったけど、それは心地よい疲労感で。
なにか満たされたような、そんな気分だった。