第7章 夏休み 1
ーMsideー
今日も美術室へやってきた。
智の邪魔にならないように最初から声は掛けない。
昨日の感じだと声を掛けたところで気付かなそうだけど、一応ね。
黙ってしばらく智を眺めてから、今日は持参した宿題をやることにした。
翔に一緒にやろうって誘われたけど、2人の時間を邪魔したくないし。
それにここだと、智の集中力を分けてもらえる気がした。
勉強して、疲れたら智を眺めて、なんだか穏やかでゆったりとした時間を過ごした。
今日も15時過ぎた頃に智の集中力が切れた。
「あ、潤だ」
今日は俺が居ると分かっていたからか、驚かれることはなかった。
「お疲れ」
「この時間になると腹が減るんだなぁ」
「それで集中力が切れるんだ?」
「たぶんそう」
他人事みたいに言いながら、智は今日もパンをかじってる。
「毎日同じパン食べてんな」
「好きなんだよ。考えなくていいから楽だし」
「もっとバランス良く食べないと大きくなれねぇぞ」
「なんか翔くんもニノに同じようなこと言ってたね」
仲良いと言うことも似るんだね、なんて面白そうに笑ってるけど。
改めて見ると智は本当に少食で。
翔がよくニノに食べさせてるけど、食べさせたくなる気持ちがちょっと分かったかも。