第7章 夏休み 1
「もしかして潤もカズのことっ···?!」
ハッとして、思わず潤を見つめてしまう。
もしかして好きになったとかじゃないよな?
「あー、違う違う」
俺はけっこう本気で焦ったんだけど、潤は呑気に否定した。
「翔が好きだって知ってるのに、そんな相手わざわざ好きにならないよ。そんな睨むなって」
驚いただけで、睨んではいなかった···つもりだ。
いや、違うならいいんだけどさ。
カズは可愛いから、そんなの関係なく好きになっちゃうかもって思ったんだよ。
「じゃあ、羨ましいってなんだよ?」
分からなくて聞くと
「翔たち見ててさ、本当に好きなただ一人だけを大切に想ってるのがいいなって···最近思ってた」
潤はちょっと照れたように笑った。
「俺もそんな相手に出会いたいよ」
まさか潤がそんな風に思ってたなんて知らなかった。
「それで最近女の子と遊んでなかったのか」
去年の夏は女の子たちの相手で忙しそうだったのに、今年は暇そうだなと思ってたんだ。
「そう···。それにさ、一緒にいて楽しくないのに付き合ってるのは相手にも失礼だって雅紀に言われたんだよ」
「それは正論だな」
「俺も分かってたんだけどさ。こうはっきり言葉にされたら、ちょっと胸に刺さった」
雅紀は真っ直ぐなやつだから、余計に潤の心に響いたのかもな。
潤はもともとすごく真面目なやつなんだ。
女の子と遊ぶのが悪いとは言わないけど、何となく潤らしくない気はしてた。
一人を一途に大切にする方が似合う。
「潤に本気で想われる子は幸せだと思うよ」
「まだそんな相手いないけどね」
「突然現れるかもしれないよ」
俺がカズに出会ったみたいに。
「それか気付いてないだけで、意外ともう出会ってたりしてね」
軽い気持ちで言ったのに潤は何か引っ掛かったような顔をした。
「お?誰か心当たりでもいるの?」
「いないよ」
潤はすぐに否定したけど、なんとなく誰かを思い浮かべてるんじゃないかと思った。