第7章 夏休み 1
ーNsideー
智の絵を褒めたら、翔ちゃんが微妙な顔をしてた。
翔ちゃんは絵があんまり得意じゃない。
だから智の絵と比べて気にしちゃったのかと思って、何とか褒めたかったんだけど···うまい言葉が見つからない。
俺、本当に翔ちゃんの絵好きなんだよ?
独特だけど、味があるしさ。
それにさ、何でも出来ちゃう王子さまな翔ちゃんがあんな絵描くなんて···意外だけど可愛くない?
本人は大真面目に一生懸命描いてるんだよ?
もう愛しくなっちゃうよね。
でもそんなこと翔ちゃんには言えないから
「俺は大好きっ!」
“大好き”って言葉にいろんな気持ちを詰め込んだ。
そしたら翔ちゃんも笑ってくれたから、ホッとした。
智は智、翔ちゃんは翔ちゃんだもん。
絵に関しては智に敵うわけないし。
だって賞とっちゃうくらいだから。
だから気にすることなんてないよ。
そもそも俺の絵だって翔ちゃんのこと言えないから。
それにしてもさ。
チラリと智と潤くんの様子を伺う。
美術室に来たときから思ってたんだけど、なんか今日2人の雰囲気がいつもと違くない?
潤くんの智を見る目が優しいような。
智が潤くんをチラチラ意識してるような。
今だって、潤くんが智の絵を好きだって言ったらさ、智真っ赤だよ。
何その反応!
俺が好きって言ってもそんな顔しなかったじゃん!
それってさ···
もしかして、もしかするんじゃないの?
俺たちが来る前に何かあったのかな?
後で智に聞いてみよっ。
「カズ?ニコニコしてどうしたの?」
「今はヒミツ。今度教えてあげるね」
翔ちゃんは気付いてないみたい。
まだはっきりしないから翔ちゃんには言わない方がいいよね。