第7章 夏休み 1
ーMsideー
ニノが智の絵を好きだと言ったら、翔の顔がひきつった。
それをどう捉えたのか
「俺、翔ちゃんの絵も好きだよ!」
ニノがそんなことを言い出した。
それを聞いて思わず噴き出してしまう。
翔の絵ね···
思い出すと笑いがこみ上げてくる。
翔に絵の才能はない。
ふざけてんのかと言いたくなるくらい。
いや、本人は大真面目なんだろうけどさ。
あれもある意味何を描いてんだか分からないよなぁ。
「味があるっていうか···見て楽しい気持ちになるっていうか···」
「う、うん」
ニノは一生懸命言葉選んでるけど、全然褒めてねぇから。
翔が睨んでるのは分かるが、ツボにはまってしまって笑いが止まらない。
そのまま成り行きを見守ってたら
「···ええと···俺は大好きっ!」
それ以上褒め言葉が見つからなかったのか、ニノが強引にまとめた。
すると途端に翔が笑み崩れる。
さっきまでひきつった顔してたのに。
「あーあ、またあんな顔して」
もう見慣れてしまったデレデレ顔。
まー、ニノに大好きなんて言われたらそりゃ嬉しいか。
絵に対してだけどな。
それにしても
「絵にまでヤキモチ妬くかねぇ」
ついつい呆れ声になってしまう。
「やっぱりヤキモチだよね」
智もちょっと呆れたように笑った。
例え絵でもニノが智を好きって言ったのが嫌だったんだろうな。
それにしてもニノはなんだと思ってあんなこと言い出したんだろ?
ま、なんでもいいけど。
もう一度智の絵に向き直る。
「···これディズニーのパレードなのか」
正解が分かっても、俺にはそう見えない。
智にはあのパレードがこんな風に見えていたのかな。
「智の目には世界がどんな風に見えてるんだろうな」
「え?」
口に出したら智がキョトンとした。
「きっとすごく綺麗なんだろうな···この絵みたいに」
智の見ている世界を俺も見てみたいと思った。
それくらいこの絵は綺麗だった。
「でも、なんでニノには分かるんだろ?なんか悔しいな···俺だって好きなのに」
俺には分からないのにニノには分かったことが何となく悔しくてつい愚痴ってしまう。
付き合いの長さの違いか?
俺も、分かるようになりたい···
智のこと···