第7章 夏休み 1
綺麗だけど一体何の絵なんだろうなと潤と悩んでいたら、カズも隣にやってきて一緒に絵を覗きこんだ。
しばらく見つめたあと、ちょっと小首を傾げて
「智、これこの前見た雨のパレード?」
カズが聞くと、智くんは嬉しそうに頷いた。
「そうだよ」
「やっぱり!綺麗だね~!」
カズはニコニコしながら絵を見ているが
「えっ!?ニノなんで分かったの!?」
潤が目を見開いて驚いてる。
俺も驚いた。
この絵のどの辺がディズニーで、どの辺がパレードなんだ?
「えー?なんとなく?」
カズが口元に人差し指をあてながら首を傾げる。
なにその仕草!めちゃくちゃ可愛い!
「なんとなく?」
「なんとなく」
繰り返すカズに、いや分かんねぇって潤が首を捻る。
「何でか昔からニノはどんなに抽象的なのでも俺が何描いてるか分かるんだよ」
不思議だよね~って智くんまで首を捻ってる。
でもその顔はどこか嬉しそうに緩んでいて。
「智の絵が好きだからかな」
カズはなんだか胸を張って得意気だ。
絵のことだって分かってるし、なんならカズが智くんのこと大好きなのも知ってるけど。
それでもカズの口から出た“好き”って言葉に、反射的にぴくりと顔がひきつってしまった。