第7章 夏休み 1
「そうなんだ···ごめん。集中してたや」
「別にいいけど。勝手に見に来ただけだし、楽しかったし」
「楽しい?」
「うん」
潤は本当に楽しそうに笑っていて。
人が描いてるのをただ見てるだけで楽しいか?
いや、俺なら楽しいけど。
潤も絵に興味あるのかな?
···ていうか、気付いてなかったとはいえ、ずっと見られてたとかちょっと恥ずかしいんだけど。
一体いつから居たんだろ。
本当に全然気付かなかったな。
「今何時?」
「15時過ぎ」
「だからお腹空いたんだ」
手を洗って、家から持ってきたパンをかじる。
「潤は?」
「とっくに食べた」
ま、この時間じゃそうだよな。
「智すげぇな!本当に上手いんだな!」
潤はまだ描き終わっていない絵を真正面からマジマジと見ると感嘆の声を上げた。
「そんなことないよ」
そんな素直に褒められるとやっぱり照れくさい。
「何描いてんだか全然分かんないけど」
「分からないのかよ」
ちょっと呆れたくなったけど、まぁこれは分からないか。
「でもすげぇ綺麗!」
潤の目がキラキラしてる。
「俺、好きだな」
ドキッとした。
あんまり優しい顔で言うから。
「あ、ありがと」
なんか告白されたみたい···なんてバカみたいなこと考えて、顔が熱くなった。