第7章 夏休み 1
ーOsideー
家にいるとダラダラしちゃうから、午前中から学校に来た。
先生に頼んで美術室の鍵を開けてもらう。
今日は他の部員は誰も来てないから、気兼ねしなくていいな。
そう言えば、潤が学校来るなら連絡しろって言ってたか···
別にしなくてもいいんだろうけど、後で文句言われても面倒だし。一応しとこ。
簡単にLINEを送って、早速準備を始める。
汚れ防止のエプロンを身につけて、描きかけのキャンバスに向き合った。
ただ心の赴くままに筆を走らせていると、少しずつ周りの音が遠くなっていく。
世界に自分と目の前のキャンバスしか存在していないような、そんな錯覚に陥りそうになって。
そのまま、どんどん無心になっていく。
何も考えず、ただ手を動かす。
大好きな時間。
ふと、腹減ったなーと思った。
そしたらお腹が鳴って集中力が一気に切れた。
今何時だ?
時計を見ようとして、体を動かしたら
「あ、休憩?」
「わぁっ!!」
ものすごい近くに潤がいて、めちゃくちゃビビった。
「人の顔見て驚くなよ。失礼だな」
潤が何やら文句を言うが、こんな濃い顔がいきなり目の前にいたらそりゃ驚くよ。
「あー、びっくりした···潤いつからいたの?」
「けっこう前からいたぜ?」
まだ若干バクバク言ってる胸を押さえてたら、声掛けたのに全然気付かねーんだもんって笑われた。