第6章 終業式
手紙は深い反省の言葉から始まっていた。
それから、親の転勤で海外へ行くこと。
そのために今日で転校すること。
もう二度と俺の前には現れないと誓って、最後は俺の幸せを願う言葉で締め括られていた。
読み終わってもすぐには言葉が出なかった。
何とも言えない気持ちで手紙を見つめる。
「大丈夫?」
頷いても、翔ちゃんはまだ心配顔だ。
「丸山くん、転校するんだね···」
もう姿を見ることはないと思うと気が抜けた。
真っ先に出てきたのは安堵の気持ちだった。
どんなに忘れたと思ってても、丸山くんを見かけるだけで怖くて。
どうしても心のどこかが緊張していた。
「海外行くこと決まってたから、告白してくれたのかな···」
俺なんかの何が良かったのかは分からない。
でも好きだからあんなことしたんだよね。
「庇うつもりはないけど···俺の知ってる丸山は穏やかで真面目で。たぶんカズのこと本当に好きだったんだと思う」
「···うん」
「それでも、あいつのしたことは許されることじゃないよ」
翔ちゃんが厳しい声で言った。
「好きだからって、そんなの何してもいい理由になんてならない」
だから許さなくていいんだよって言ってくれた。
正直、早く忘れたい忘れなきゃってそれだけで、許すとか許さないとかそんなこと考えたことなかった。
手紙を読んでなんとなく許さなきゃいけないような気持ちになったことも、翔ちゃんには分かっちゃったのかな。
無理して許す必要なんてないんだ。
自然な気持ちの流れに任せよう。