第6章 終業式
「教室行こう」
靴を履き替えたら、翔ちゃんが俺の手をそっと握ってくれた。
まだ震えが止まってないこと、気付かれてた。
そのまま教室まで手を引いてもらって歩く。
何も言わないけど、繋いだ手から翔ちゃんが心配してくれてるのが伝わってくる。
心配掛けてごめんね。
俺、全然進歩してない。
もっとしっかりしなきゃなのに···
また翔ちゃんの優しさに甘えてるね。
消えてくれない恐怖心と、いつまでも弱いままの情けない自分への苛立ち。
翔ちゃんへの申し訳なさと、それでも心配してもらえて嬉しい気持ち。
いろんな感情がごちゃ混ぜになって。
胸が苦しくなった。
「先に読むね」
俺を椅子に座らせると、翔ちゃんはそう断ってから手紙を開いた。
今さらなんなんだろ···
恨めしい気持ちで手紙を睨み付ける。
最初は険しい顔をしていた翔ちゃんが、読み進めるうちにだんだん落ち着いて穏やかな表情に変わって。
最後まで読むと、俺に向かって優しく微笑んだ。
「たぶん大丈夫だと思うよ。無理に読む必要はないと思うけど、どうする?」
読みたい訳じゃない。
でも読まないでいるのもきっと気になってしまうから。
「······読む」
翔ちゃんが大丈夫って言うなら大丈夫。
呪文のように心で唱えてから、手渡された手紙を思いきって開いた。
翔ちゃんはぴったりと真横に寄り添ってくれている。
肩に置かれた手から力を分けてもらえる気がした。