第6章 終業式
ーNsideー
今日は終業式。
明日からしばらく翔ちゃんに会えないと思うと気が滅入る。
せっかくの夏休みなのに全然嬉しくない。
当たり前に毎日会えるのは学校があるから。
休みに入っちゃったら会えないもん。
5人で遊ぼうってなったら、その時は会えるかな。
翔ちゃんにバレないように小さくため息をつく。
なんとなく憂鬱な気持ちのまま下駄箱を開けたところで、俺の手は止まってしまった。
上履きの上に乗った手紙。
最近全然なかったのになぁ、なんて。
またため息をつきたくなったけど、その時はまだ呑気だった。
手にしてみたら、それは何となく見覚えのある封筒で。
差出人の名前を見た瞬間、目の前が暗くなった。
丸山くんからだ···
嫌な記憶が一瞬で蘇ってくる。
もう忘れたつもりだったのに、全然忘れられてなかったらしい。
血の気が引いていくのが分かる。
「カズ?」
様子がおかしいことに気付いた翔ちゃんが声を掛けてくれるのに、返事が出来ない。
固まった俺の視線をたどった翔ちゃんは、手紙に気付くと険しい顔になる。
そっと俺の手から手紙を取り上げると、封筒に書かれた差出人の名前を確認してその目に怒りを浮かべた。
でもそれはほんの一瞬で、俺に視線を戻した時にはいつもの優しい目に戻ってた。
翔ちゃんは、震えて動けない俺をそっと抱き締めると
「大丈夫、カズのことは俺が守るよ」
耳元で囁きながら、優しく背中を擦ってくれる。
「大丈夫だから、安心して」
翔ちゃんの腕の中で、翔ちゃんの言葉が俺の心に染みてくる。
翔ちゃんが大丈夫って言ってくれれば、俺は大丈夫。
翔ちゃんの言葉は俺に力をくれるんだから。
「うん···ありがと、翔ちゃん」
大きく深呼吸して震える体を無理やり動かすと、そっと翔ちゃんから離れた。