第5章 誕生祝い to Nino
「ニノが俺にだけ可愛くない態度取るのも、特別みたいで嬉しかった。でもさ、翔くんに対する態度見てると全然違うじゃん。10年近くニノの側にいるけどさ、あんな顔見たことなかった···あんな可愛い顔···」
雅紀の悲しそうな顔に俺まで胸が痛くなってきた。
「あれが本当の特別だよなって」
「雅紀だってニノの中で特別だと思うよ。あんな態度取るのだって、雅紀のこと信頼して甘えてるから出来るんだろ?」
「そうかな」
本当にそうだと思う。
でも雅紀はただの慰めだと思ったのか全然信じていない。
「翔は雅紀が羨ましいって言ってたよ」
「へ?!」
「ニノが雅紀には素を見せてるって。俺にはあんな態度してくれないって拗ねてた」
「翔くんが?!」
先日の翔とのやり取りを教えると、よっぽど意外だったのか雅紀は目を見開いて驚いている。
「翔は雅紀や智のがニノの特別だって思ってるみたいだぜ。お互い同じようなこと考えてんだよ」
「そう、なんだ···翔くんでもそんな風に思うんだ···」
そう呟いた声から自嘲的な響きが消えていてホッとする。
表情もだいぶ和らいだ気がした。
「この話バラしたこと翔には内緒な」
「うん、分かった」
雅紀は柔らかく笑うと、小さくため息を吐いた。
「俺さ、自分の気持ち自覚したのと失恋が同時だったから···自分の中でまだうまく整理がついてないんだ」
「そっか」
「ニノには幸せになってほしいし、2人を邪魔する気もないよ。でもさ···頭では分かってても···」
「気持ちが追い付かないんだな」
雅紀は困ったような顔で頷いた。