第1章 恋に落ちる
「にっ···二宮くんっ···」
裏庭に行くと、1人の男子が立っていた。
真っ赤な顔で、俺の名前を口にする。
たぶん彼が丸山くんだろう。
「来てくれてありがとう。本当に嬉しい」
赤い顔のまま、本当に嬉しそうに微笑む。
「丸山くん?」
一応確認すると、頷いた。
「突然呼び出してごめんな」
少し申し訳なさそうな顔をするから、首を横に振った。
「あのな···俺···」
丸山くんは俯いてしばらく言い淀んでいたが、意を決したようにキッと顔をあげると
「二宮くんが、好きだ」
一息に言いきった。
もしかして···とは思っていたけれど。
こんなにストレートに気持ちを伝えられると、やっぱり驚いてしまって。
俺は何も言えず、視線をそらすことも出来ず、黙って見つめてしまった。
たぶんそれがいけなかったんだろう。
「···やっぱり可愛い」
丸山くんがぽつりと呟いた。
その、俺を見る目が何か変わった気がして、反射的に後退る。
すると俺が下がった分丸山くんが前進する。
何だか怖くなって、後ろ向きのままジリジリと移動していたら、急に背中にドンッと何かが当たった。
それは大きな木の幹で、慌てて避けようとした瞬間、顔の両脇にバンッと丸山くんが手をついた。
これって壁ドンじゃん···木だけど···
頭の片隅でチラッとそんなどうでもいいことを考えたけど、今はこの状況に恐怖しかなくて。
「何?やめてよ」
抗議するけど、小さな声しか出ない。
それでも目の前にいるんだから、丸山くんには聞こえてるはずだ。
「二宮くん、好きだ···ずっと見てた。好きなんだよ」
突然抱き締められた。
「やだっ!離してっ!」
離してほしくて力一杯もがくが、俺の力では丸山くんの腕はびくともしない。
耳元にハァハァ荒い息が掛かって、あまりの気持ち悪さに鳥肌が立つ。
「やめてっ」
叫んでも、丸山くんの耳には届いていないようだった。
「好きだ···好きなんだよ···」
繰り返し呟きながら、首元に顔を埋めてくる。
ネクタイが引き抜かれて、シャツのボタンが外されていく···
怖いっ!
「やだっ!誰か···」
こんな所に誰もいないと分かっていても、怖くて逃げたくて助けを求めてしまう。
その時
俺の前に王子さまが現れた。