第5章 誕生祝い to Nino
実はつい先日、翔ちゃんと下校中に姉ちゃんにばったり会ってしまった。
ま、うち近いからね、全然あり得ることなんだけど。
突然だったのに翔ちゃんはとても丁寧に挨拶してくれた。
姉ちゃんも笑顔で応えて、それで終わりのはずだった···
はずだったのに!
家に帰るなり姉ちゃんはこう言ったんだ。
「櫻井くんと付き合ってるの?」
·········っ??!
あまりの衝撃で咄嗟に何も言えなかった。
「···な、何言って···」
何とか絞り出した声はカラカラで、否定しなきゃって思うのに上手く出来ない。
「違うの?そんな風に見えたから···」
動揺する俺に対して姉ちゃんはごく普通で。
「···だって男同士だよ」
「大丈夫、私偏見ないし。カズが本気なら応援するよ」
姉ちゃんはニコニコ続けた。
笑ってるけど全然からかったりしてる感じじゃなくて、姉ちゃんの本心だって分かって。
ちょっと泣きそうになった。
素直に打ち明けてみようって思えた。
「付き合ってないよ」
「そうなの?」
「俺の片想いだもん」
「そっか···」
姉ちゃんは俯いた俺をぎゅっと抱き締めてくれた。
そんなことされたの子どもの時以来だった。
「俺のこと気持ち悪いって思わないの?」
「思うわけないでしょ。恋愛は自由だし···カズはカズでしょう?」
姉ちゃんの言葉は心にスーっと染み込んだ。
ちょっと恥ずかしかったけど、しばらく抱き締められるままにしてた。
姉ちゃんが俺の気持ちを否定しないで受け入れてくれたことが本当に嬉しかったんだ。