第5章 誕生祝い to Nino
ーNsideー
明日は誕生日。
正直ちょっと忘れてた。
別にめでたいとも思わないし。
それなのに···
翔ちゃんがお祝いしようって!
みんなでディズニーランド行こうって!
こんな嬉しいことある?
大好きなディズニーランドに大好きな翔ちゃんと行けるんだよ?
どうしても浮かれちゃって。
今週はこっそり心の中で毎日カウントダウンしちゃったりしてさ。
ずっと浮かれてたんだけどね···
いよいよ明日っていう今、ベッドの上に持ってる洋服全部並べて途方に暮れてる。
もともと服に興味なくて、着れれば何でもいいと思ってる。
普段は制服だし。
で、改めて明日の服を考えてたんだけど。
ロクな服がない···
どーしよ···
これが雅紀や智だけなら何も悩まない。
服なんて何でもいい。
でもさ、翔ちゃんもいるんだよ!
翔ちゃんと初めてのお出掛けなの!
変な格好してけないでしょ。
見栄張っても仕方ないかもだけど、やっぱりだらしないとかみっともないとか思われたらやだし。
もっと早く気付けば買いに行けたのに。
ううう···と悩んでいたら
「カズー···わ!何これ!?」
突然姉ちゃんが部屋に入ってきた。
「何だよっ」
つい声が尖る。
「学校に辞書忘れちゃったから貸して」
もう!こっちはそれどころじゃないのに!
辞書を渡して部屋から追い出そうとしたのに、姉ちゃんは出ていってくれない。
「何?明日誕生日デート?」
散らかった服を見た姉ちゃんがニヤリと笑う。
鋭い···
いや、違うけど!デートじゃないけど!
ついドキッとしてしまった。
「ちがうもん」
声が小さくなってしまう。
「ちがうの?てっきりこないだ会った櫻井くんと出掛けるのかと思ったのに」
姉ちゃんはニヤニヤしたままだ。