第1章 始まり
「お前の言ってることは全くわけわからんが、
結局どうするんだ。
俺の銃を取り上げて自殺するのか?」
男はニヤリと怪しげな笑みを浮かべる。
「私、銃の使い方知りません。
もしよろしければ殺していただきたいのですが。」
「殺して欲しいと言われると、したくなくなるものだな。」
「………殺さないでください。」
何故か自分で放ったこの言葉には後悔を感じた。
死にたいと言っておいて生にすがる事を言った為か、
それとも男が髪をかきあげた手の下から薄く笑っていたからか。
「なら殺してやろう。」
「!」
パッと気持ちが明るくなる。
やっと死ねる。この辛い人生から解放される。
「俺の願いを叶えたらな。」
(……)
「一応聞きますが、願いとはなんですか?」
「秘密だ」
な
ん
だ
と
なんなんだこの男は。私の頭がおかしいと思ってからかっているのか。
正直おかしいと思われても仕方がないが腹が立つ。
「まぁどうせ一回捨てた命だろ。他に使い道なく捨てるより
俺に使われて捨てる命の方が得だろ?」
(そうかぁ???得かぁ????)
男の満足そうな笑みを見る限り、
私の訝しげな気持ちは顔に出ているようだ。
(でもまぁ、実際凍死を抜いて、他に死ぬ方法思いつかないし
暫くこの男について行くか。)
「分かりました。他に目的もないのであなたに協力する事にします。
犯罪は嫌ですけどね。」
「安心しろ、犯罪ではない。」
ちょっともやもやするのは彼の持つ銃の所為だろうか。
まぁ、とりあえずこの状況だと疑っても始まらない。
「私は。東京の平成生まれです。残念ながらゆとり世代です。
仕事はwebデザイナーをやっていました。」
男が顔を曇らせる。
「平成?なんだそれは。」
「えっ、年号ですよ。平和に成るって書いて。
昭和生まれですか?」
「………俺は明治生まれだ。」
………
………
どうやらここは核の炎に包まれるどころか、
まだ核のない時代のようだった。