第1章 始まり
(結局死に損なった……
もう、次の死に方を考える気力もない……)
何も力が起きない。
死にたい。
何故こんな事に……
「……何してんだお前」
フードを取ったのに瞳に光の入らない男の視界には
囲炉裏の前で頭をかかえて丸くなっていたがいた。
「……絶望しています。」
「少し見ただけだろ。そんな気にするな。」
「裸を見られたから絶望してる訳ではないんです。
死にたかったのに死ねなかったから絶望しているんです。」
男はよくわからん、コイツ面倒くさいぞ、という顔でを見ている。
「もう喋りたい気持ちなのでサマって言ってしまうと、
私婚約者に浮気されたんですよ。
まぁそれは自殺のキッカケであって、死にたい気持ちの根源は
母がうつ病で小さい頃からずっと私は人格を否定されて育ってきたんですね。
なので私自己肯定力が低い上に、他人を信じられないんですよ。
それでもこの年まで生きてきたのは、親から祝福されて育った奴らを見返すために生きてきました。」
男の目が少し細くなった。
「あの人生に不安を感じられない笑顔。
絶対にアイツらより富を得て幸せになってやる。
そう思ってたんです。
そんな中、私のこの捻くれた考えを否定せず、ずっと一緒にいてくれたのが婚約者でした。
彼に肯定されたり、信じてた時は幸せでした。
でもそれは偽物だったみたいです。」
男は黙っている。
「親から愛を受けられなかった子供は、本物の愛が分からないという一説があるそうです。
私には本物の愛が分からなかったんですね。
彼とは別れました。
でも、偽物でも支えてもらえた味を知った私は
もう一度否定をしまくる自分を支えて、世界のみんなを疑って生きていく程の力は残ってなかったみたいです。
仕事は好きでしたが、元々生きていくのが辛かったので、
ここがキリのいい所だと思ってビルから飛び降りました。
そしたらこの雪山に居て、今に至ります。
以上です。」
「長いな」
「そうですね、全然サマってなかったですね。」