第1章 始まり
その言葉を聞いて、男の口角が少し上がった。
「ならばお前は俺の斥候になれ。
北に少し歩いた所に小屋が見えた。
中に入って害がないか見てこい。
害がなければ扉を開いて右手をあげろ。」
(なるほど丁度いい役回り)
グレーで役に立つか分からない者を扱うには好手だ、と回らなくなった頭を縦に振り、男の指す方へ歩いて行った。
(しかし、女に対してもこの扱い。そしてこんな山の小屋に敵がいるかも知れない状況となると、相当治安が悪いな。
多分中尉を敵に回してるから、脱走兵とかかな?
日本語を話しているから日本だとは思うけど、この治安の悪さどこだろう。
世紀末かな?核の炎に包まれた未来かな?)
色々考えながら森の中にある小屋に着く。
暫くは誰も使っていないのだろう、木の家にはカビや苔が所々に見える。
扉を開けようと思い横に引くと半壊してしまった。
「マジか…」
中を見ると12畳程だろうか、玄関と居間があり、真ん中に囲炉裏のようなものがある。
害のありそうなものはせめて埃やカビだろうか。
(というか、私他に人が居ないからあの人に頼ってるけど、小屋に二人っきりになったら犯されるんじゃないか?)
しかしだからといって雪原にずっといるのは嫌だ。
何だかんだ死ぬタイミングも失ってしまった。
仕方がないから成り行きにのっているが、これからどうしよう。
そんな事を考えながら外に向けて右手をあげ、待っていると、
あの男が警戒しながらやってきた。
二人で中に入り、男は念のためだろうか、銃を持ちながら
中を見て回った。
周り終わるとフードを取り、少し安堵したのだろうか軽くため息をつき、に微笑みながら銃を向け言った。
「脱げ」