第3章 目的
魚を買ってから少し街内をうろつき、晩御飯の準備もある上、他に目ぼしい人皮の話がなかったのではアジトへ帰った。
玄関で靴を脱ぎ、上がると
「おかえりなさい、ちゃん」
と、布団に入った家長が迎えてくれる。
「ただいまです。家長さん。
お腹空いてます?」
が問う。
「そうねぇ、そこまでは空いてないけど…。」
家長が頰に手を当て、答えた。
「じゃあ、下準備だけしちゃいますね。
他の方はもう帰ってこられました?」
「いいえ、みんなまだよ。」
(家長さんと二人きりか……
油断したら食べられちゃうかもね……)
「ありがとうございます。
では台所行ってきますね!」
笑顔で言い、台所へ向かった。
三角巾を頭につけ、エプロンをつけ、台所に立つ。
鰊は始めて調理するが、他の魚と同じようにやれば大丈夫だろうと、手に取った。
3枚におろし、おろした身を3等分する。
切った身を霜降りして、鍋に入れた。
鍋に水と酒、味噌と砂糖を入れて少し煮る。本当は生姜も欲しいがなかったので仕方がない。
煮ている間に米を炊き、米を炊いている間に鰊を火から下ろし、少し置いた。
「ん……?」
ふわっと魚臭さを感じた。
鰊を嗅いでみたが、魚臭さは、しない。
米も大丈夫そうだ。
と、するとと思いは手を嗅ぐと
「うわぁ…」
魚臭かった。
仕方のない事だが、これでご飯を食べるのは嫌だなぁと思い、どうすれば取れるのかを思い出してみた。
(あ、そういえば鉄に触れば魚臭さは取れるんだっけ?)
昔テレビで見たようなきがする。
しかし鍋や釜は今熱いし…と探すと包丁が目に入った。
(………大丈夫でしょ。)
そんな風に思い包丁を手に取り、指を擦りつけてみる。
(ん??取れてるのか?)
擦りつけた指を嗅いでみたが、よく分からなかった。
だが鰊を切った包丁は魚臭くない。
もう一度指をやるか、と擦りつけた時
「ッツ!」
指を切ってしまった。