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祝福と呪いと兄と

第2章 変化


後ろを振り返ると、少し離れた所に尾形さんが柱に寄りかかって立っていた。
しっかり銃はもっている。

「いらっしゃったんですね。」
独り言を聞かれていたようだ。恥ずかしい。

「お前が牛山に喰われないか見てやったんだよ。」
髪をかきあげる。

「……ありがとうございます。」
珍しく気を使われている気がする。

「お前は何でそんなに死にたがってんだ?
俺との約束はどうした?」
尾形はその場に座り込んで、そう問いかけた。

「約束完了の内容が分からないのに約束できません。
………今死にたいのは生きる理由がないのと、生きるのに疲れたからです。
多くの人は死ぬ理由がないから生きているけど、私はそれで生きるのは辛くて……
多分母の呪いの所為だと思います。」

「……」

「小さい頃から成人するまでずっと、私は母に人格を否定されて生きてきました。
恐らくそれで"私"と言うものに意味がないと、私は自分が要らなく思えるんです。」
思い出す居場所のない日々。勉強してないと"居"てはいけない。家事をしてないと"居"てはいけない。母に感謝をしないと"居"ては、いけない。


「あ、でも自分を否定してるからって私は自分の事嫌いではないですよ?
私は自分で自分を否定する所も、人を信用しない所も、死にたがりな所も好きです。」
そう笑顔で言うと
変なヤツだな、と微笑された。
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