第2章 変化
ドンッ!!!
また銃声がする。日泥の親方の手に穴があく。
「馬吉!!床屋の前に落ちてるからさっさと拾いにいけッ!!」
尾形さんが声をあげる。
が、怖気付いてるのか誰も行かない。
「私行きましょうか?」
双眼鏡で箱を見ながら言う。
「馬鹿野郎、お前が取りに行ったら誰が俺の周りを警戒すんだよ。」
ジャキッ、と弾を装填する。
確かにそうだが、しかしこれでは中々死ねない。
最初は死ぬ確率が高い斥候だったのに、山小屋で私のくだらない身の上話をしてからは観測役になった。
(でもそれだと観測役の私が死ぬ=尾形さんも死ぬ、
の確率が高いから、私中々死なないのよね。
一応助けてもらったようなもんだし、尾形さんを道連れには出来ないからなー。)
双眼鏡であたりを警戒しながら考えていた。
一応約束はしたのに何故死から遠ざけたのか。
哀れな私に情でも湧いたのだろうか。
まだ一緒にいて短い私でも分かるくらい、
非情と辞書で調べたら、尾形と出てくるであろう男が私を哀れむのであろうか。
フッと、その可能性はないなと思い笑った。
「遮蔽物の間を最短距離で移動しながら前に進め!!」
尾形さんがチンピラ達に向かって叫ぶ。
流石元軍人さん。為になる情報だなー。
!
ふと気がつく。
「尾形さん、箱をチラ見してくる日泥のチンピラがいなくなりました。
怪しいです。」
さっきまでは壁からチラチラ箱を見ている奴らがいたが、今は壁から様子を伺っているのは日泥一家だけだ。
「……分かれたか。
誰でもいいからさっさと取りに行けッ!!」
尾形さんの叫びに反応してか署長が取りに行く。
が、道の側面から撃たれてしまった。
「家の中にいる……
尾形さん、家の中を通って日泥集が近づいています。」
「なるほどな。
そろそろ逃げ時かもしれん
先降りろ」
(尾形さんが先行った方がいいのでは?)
と、思いつつもその問答で時間を使っては意味がない。
さっさと下に降りていると
カアァァン!!
と音がした。
見上げると尾形が包囲射撃をうけている
「尾形さん!!」
そう叫んだ瞬間
彼は肩を撃たれて落下した。