第17章 理由
「悔しくて悔しくて何度も泣いた。結局見た目がいい方が勝つのかって。私は一生一花には勝てないのかって…。
……でも、どんどん弱っていく火神を見て、あぁ、この人には一花が必要なのかって、思ったの。大好きなバスケまで諦めようとしてる火神達に私が付け入る隙なんて無かった。」
涙目になってそう語る広瀬。
「一花の目が覚めて、二人が付き合うって聞いた時反対したのはまだ火神に未練があったから。…でも、二人を見てると本当に愛し合うってこういう事なのかって思って、素直に応援したいと思ったの。」
これは本当、と付け足す広瀬。
そういうことを改めて言われると少し照れる、…ってそんな場合じゃねぇか。
「それからしばらくは仲良くしてる二人を見てるとこっちまでわしあわせだった。…不思議だよね、あんなに憎かった相手に幸せになって欲しいと思ったんだもん。」
少し自嘲気味に笑う広瀬。
「…でも、それも長くは続かなかった。大学を出てこのカフェで働き始めてからまた二人に出会った。火神たちはいつまでたっても変わらないまま、幸せそうで、…それが羨ましくて羨ましくてしかたなかった。
だから壊してやろうと思ったの、全部。」
「………。」
「あの幸せそうな顔を絶望に変えてやろうと思ったの!」
「でも、一花はそんなことをされてもお前を軽蔑しなかった。」
「……!」
広瀬と俺が一緒にいるところを見て傷ついた一花は、俺や広瀬を責めずに自分を責め続けた。
「その苦しみがお前に分かるか?」
「………。」
もう我慢の限界だった。
「不良品って言われた女の気持ちが、お前に分かんのかよ!!」
カウンター越しに広瀬の胸倉を掴み殴りかかろうとする。
…が、その腕は細く柔らかい手によって止められた。