第17章 理由
「…嫉妬してたの。」
「…嫉妬って?」
「高校の時から優秀で可愛くて人気者で、そんな一花に嫉妬してたの。」
「………。」
正直、そんな事で一花を傷付けたのかと怒りたくなった。でも、広瀬の表情を見ると広瀬自身も相当傷ついていたのかと感じる。
カウンターに爪を立て、コンコンと音を立てながら話し始める。
「私ね、高校生の時、火神のこと好きだったの。」
「…は?」
「っハハッ!間抜けな顔。安心して、今はそんな事思ってないから。」
「お、おう。」
まさかの事実に動揺してしまう。
だが、俺のことは気にしないで話し続ける。
「私、実は3年間も火神と同じクラスだったの。火神は覚えてないと思うけど。」
「…すまねぇ。」
「ううん、別にいいの。でも私は高1の時からずっと火神が好きだった。だけど、近くの席になることなんて一回もなくて話しかけることもできなかった。」
「………。」
「でも一花は、あっという間に隣の席になって火神と仲良くなっていった。だから、初めは利用しようとしたの。一花と仲良くしてれば火神に近づけるかなと思って。」
話が進むにつれてカウンターを叩く音が大きくなっていく。それは広瀬の感情の揺れをそのまま現しているようだった。
「でも、火神は私のことなんか見てなくて、一花に夢中だった。」
「…つまり、俺にも原因があったのか?」
「さぁね。…けど、一花が事故に遭った時は正直嬉しかった。」
「…はぁ?」
あまりの自分勝手に腹が立つ。
結局自分が可愛かっただけじゃねぇか。
…でも広瀬とのことは俺が解決しなくちゃいけない。
今イラついて話の腰を折っちゃダメだ。
なんとか怒りを鎮めて話の続きを聞く。
「やっと火神が私を見てくれるって。…なのに一花が眠ってる間も火神は一花のことばっかりだった…!」
ドンッ!!
広瀬が怒りをぶつけるように、カウンターに拳を叩きつける。