第20章 温泉旅行
改めて一花の顔を間近で眺める。
丸くて大きな双眼の周りには
びっしりと長い睫毛が生えていて、
高く通った鷲鼻、ぽってり厚めの唇。
湯けむりに当てられてか、その頬と唇はほんのり赤く染まっている。
これが美人って言うんだろうな、なんてぼんやり考えていた時。
流石に見過ぎただろうか。
今まで景色を見ていた一花が、その大きな黒目を俺へと移し、少し不思議そうに首を傾げた。
「どうしたの、大我?」
「…えっ、あー、いや、やっぱり一花は可愛いなと思ってよ。」
素直に思ったことを口にすれば、みるみると真っ赤に染まる一花の顔。
「おい、大丈夫か?顔真っ赤だぞ。」
「…あんまり言わないで。もっと恥ずかしくなっちゃうから…。」
「顔隠すなって、…なぁ、もっと見せろ。」
顔を覆っていた手を優しく退かせ、見えてきた顔に優しく口付ける。
まずはおでこ。
次に頬、瞼、鼻。
最後に唇。
チュッ、と音を立てて離れた唇同士はまだどこか名残惜しそうで。
もう一度、惹かれ合うように唇を重ねた。