第16章 相談
青峰に車椅子を押されながら厨房に入ってきた一花。
「一花…!何もされなかったか!?」
その言葉を皮切りに青峰との軽い言い合いが始まる。
何を話してたのかは知らねぇが、一花が世話になったのは事実だ。
だから素直に礼を言えば、気持ち悪いと言われる始末。
じゃあ、どうしろってんだよ。
半分やけになって叫ぶと、青峰が突然俺の肩に腕を回し一花に聞こえないような小さな声で俺に囁いた。
「一花のこと、大事にしろよ。」
青峰は突然真面目になるからいつも驚かされる。
でも、こいつの言ってることは今の俺にとって一番必要な言葉だ。
そういうところに気づいてくれるこいつには正直感謝している。
「……。」
俺はその言葉にしっかり頷くと青峰はフッと笑い、裏口へと向かう。
一花が礼を言うと、妹と接するみたいに顔が柔らかくなる青峰。
一花は色んな奴に愛されてるんだな…。
俺はそんな人に愛されて本当に幸せだ。
俺たちに背を向けたまま手を振る青峰を見送った後、一花に声をかけられる。
『大我、帰ったら話したいことがあるの。』