第16章 相談
青峰くんに車椅子を押されながらエレベーターに乗る。
ピンポンと軽快な音を鳴らして開いたドアの向こうには、心配そうにしている大我がいた。
「一花…!何もされなかったか!?」
大我…。過保護過ぎだよ…。
でも、それだけ愛されてるのかと思うと少し嬉しかった。
「お前、俺をどんな奴だと思ってんだよ。」
「あぁ?ガングロの変態だろうが。」
「なんだと、火神?せっかく嫁の面倒見てやったのによ。」
売り言葉に買い言葉。どうして二人はこんなにテンポよく言い合いできるんだろう。
それより、まだ嫁じゃないし、ちょっと恥ずかしい。
でも、大我はそれ以上に嫁という言葉に反応してた。
「はぁ!?ま、まだ嫁じゃねーよ…///。」
「冗談だろ。そんなことでいちいち照れんな、気持ち悪ぃ。」
「う、うるせーよ!……まぁ、サンキューな。一花が世話になったみたいで。」
「何だよ急に素直になりやがって。それもそれで気持ち悪ぃな。」
「じゃあどうすりゃいいんだよ!」
「はぁ?知らねーよ。とにかく…、」
青峰くんはいきなり大我の肩に腕を回し、大我の耳に顔を寄せた。
「……と……ろよ。」
なんて言ったかはよく聞こえなかったけど、大我がそれに力強く頷くのを見てわざわざ聞くのは野暮かなと思って詳しく聞くのはやめにした。
まだお店がやっている途中だったので、青峰くんには裏口から出てもらう。
『青峰くん、今日はお休みだったのにごめんね。』
「あぁ?別に暇だったしいいんだよ。」
『本当にありがとう。』
「どういたしまして。んじゃ、また。」
『うん、バイバイ。』
私たちに背を向けたまま、軽く片手を上げて帰っていった青峰くん。
本当に優しい人。
せっかく背中を押してもらったんだから、私も踏み出さないと。
『大我、今日帰ったら話したいことがあるの。』