第16章 相談
今まで避けてきたことに向き合うのはとても不安だろう。
でも、きっと一花と火神なら乗り越えられる。
俺も少しはこいつらの力になれたのか。
荷物をまとめ、帰る準備をしていると青峰くん、と声を掛けられる。
『本当にありがとう、青峰くん。』
まだ、言ってんのかこいつ。
「だからいいって、別に。…これでも俺は、お前達のこと応援してんだよ。だからそんなに畏るんじゃねぇよ。」
そう言うと、嬉しそうに口角を上げ笑う。
お前達が笑顔でいてくれるだけで俺は嬉しいんだよ。
火神もこの笑顔に惚れたのか…。
分からんでもないな。
そんなしょうもないことを考えていると、一花が遠慮がちに俺に聞いてくる。
『…青峰くん。これからも相談とかいっぱいしてもいい?』
なんだ、そんなことか。
「おう、遠慮すんな。」
『…エヘヘ、ありがとう青峰くん!』
「おう。」
俺は無邪気に笑う一花の頭を撫でた。
俺の手にすっぽりとはまる小さな頭。
中学の時から火神を通して知り合った一花。
今ではほっとけない妹みたいな存在だ。
だからこいつが悩んでたら俺も辛いし、なんでもいいから助けてやりたい。
火神の彼女だって知った時は、素直にお似合いだと思った。火神は顔は怖ぇけど、中々整ってるし、それ以上に優しい。
こいつになら任せてもいい、そう思えたんだ。
予想通りお似合いで、こっちが見てて恥ずかしくなるくらい熱々の二人。
そんな二人が抱える唯一の闇を取り払えることができるなら、どんなに幸せか。
もう充分だと思う。
一花も火神も充分悩んだ。苦しんだ。
だから、この二人には本当に幸せになって欲しいんだ。
たとえ、それがどんなカタチであったとしても。
『青峰くん、青峰くん!』
「…ん、あぁ、どうした。」
『どうした、じゃないよ。突然静かになるからびっくりしちゃった。どうかした?』
「いや、何でもねぇ。ただボーッとしてただけだ。」
『そう、ならいいけど…。』
…もう大丈夫か。
あとは二人で解決する問題だしな。
広瀬のことは、火神が何とかすんだろ。
とにかく二人がバラバラにならなくて良かった。
そんな想いを胸に抱きながら、一花の車椅子を押し玄関へと向かった。