第16章 相談
「火神っち、クラブハウスサンド一つ!」
「おう。」
昼が近づいてきて店も混雑し始める。
そんな時だった。
突然裏口が開き、今日は休みのはずの青峰が厨房に入ってきた。
「よぉ、火神。」
「なんでお前がいんだよ!今日休みだろ!?」
「おう、だから一花に会いに来た。」
「はぁ!?」
一花に何の用があるって言うんだよ。
そう聞く前に、厨房のドアが開き一花が顔をのぞかせた。
『あ、青峰くん!待ってたよ!』
「おー、今行く。」
何事も無いかのように厨房にズカズカと足を踏み入れてくる青峰。その浅黒い腕を掴み何事かと問いただす。
「何って、浮気だよ。」
「はっ?」
『違うよ!青峰くん、平気で嘘つかないで!大我もそんなこと信じないで!』
びっくりした。マジで焦った。
話を聞けば、一花が久し振りに青峰と話したかったらしい。
「そうか。それなら早く言ってくれりゃあよかったのに。」
『いや、言おうと思ったんだけど…。昨日は色々あったから…。』
そう言って顔を赤く染める一花。
その様子にすぐに反応する青峰。
「なんだ?ヤったのか?」
「違ぇよ!お前そんなことしか言えねぇのかよ!!」
まぁ、あながち間違ってはいねぇけど…。
「お前こそ満更でもねぇ顔してんじゃねぇよ。」
「してねーよ!!」
『もう二人ともやめて!!』
会うとすぐに始まっちまう俺たちの言い合いを、一花が無理矢理止めさせる。
『とにかく青峰くんはお客さんなんだから。大我もお仕事頑張ってね!』
俺たちを宥めながらも、天使のような笑顔で俺を癒してくれる。
その笑顔に愛しさが溢れ出し、そのまま一花のおでこにキスをする。
ペシッ
「いってぇ!」
そしたら青峰に頭を叩かれた。
「わざわざ見せつけてんじゃねーよ。」
「見せつけてねぇよ!!」
「なおさらウゼェわ。」
「なんだと…?」
『もう!二人ともやめて!ほら、青峰くん行こう。』
「おう。」
「お、おい。ちょっと待てよ。」
慌てて止めるが、一花は優しく俺に手を振り、青峰は俺に向かって舌を出したままエレベーターへと消えていった。