第15章 和睦
「なんでそれを見たときに話してくれなかったんだ?」
すると一花は目に涙を浮かべ
『めんどくさい女だと思われたくなくて。ただでさえ面倒かけてばっかりなのにこれ以上迷惑かけるようだったらほんとに大我の障害にしかなれないと思って、言えなかった…。』
「なら一人でなんでもしようとし出したのも広瀬が原因か?」
そう聞くと、静かに首を縦に振った。
広瀬のやつ、一花にまで迷惑かけやがって。
お陰で一瞬でも距離ができたことがバカらしく思えてきた。
「一花、あれは胸を触ってたんじゃなくて…なんつーか、胸倉を掴んでたんだよ。」
『…胸倉?』
「あぁ、広瀬があんまり一花のこと馬鹿にするからちょっとムカついちまって…。」
『じゃあ、芽美が大我に触れてたのは?』
「あれは勝手に触られただけだ。別に触ってくれなんて言ってねーよ。」
『じゃあ、なんで抱き合ってたの?』
「あれも勝手に抱きつかれただけで、俺は触ってない。」
『じゃあ全部、私の勘違い…?』
「んー、まぁ、半分そうで、半分違う感じか…?」
実際に広瀬は一花に対して最低なことしてるわけだし。あれに関してはマジで許さねぇ。
『芽美はなんて言ってたの?』
「…それは、」
『いいから教えて?』
「……。」
『お願い。』
「……女として不良品だって。」
『ハハッ、やっぱりそうだよね…。こんなに迷惑ばっかりかけてちゃそう思われるのも無理ないよ。』
「それは違う!一花は最高の女だよ。抱けないのは俺が弱いからだ。一花は悪くねぇ。」
『でも、実際そうだもん。芽美の言う通りセックスできない女なんて所詮不良品だよ。』
どこか諦めたような表情で呟く一花。
そんな顔、俺がさせてるのかと思うと情けなくて。
広瀬とのことも俺がもっと早く一花に話してればこんなことにはならなかった。
でも、どこか怖くて言い出せなかった。
余計な心配かけたくないとか綺麗事言って、実は一花を傷付けるんじゃないかって恐れてた。