第12章 予感
優しい香りに目が覚める。
昨日の仕事が効いたのか、もう一度寝てしまっていたみたいだ。
少し辺りを見渡すと愛しい人と目が合う。
「目ぇ、覚めたか?」
『うん、もう大丈夫。』
少し微笑み私の方に駆け寄ってくれる。
「移動するぞ?」
『うん、お願い。』
食卓へと移動し、朝食を作る彼を待つ。
彼の顔を観察する。彼も少し眠そうだ。
ー私の世話ばかりしているから?
最近、よくこの考えが頭をよぎるようになった。
以前から申し訳ない気持ちはずっと待っていたが、最近特に思うのだ。
私は彼を身体で癒してあげることができない。
つまり私たちはセックスができない。
やろうと思えばできるのだが、私は繋がることで快感を得ることができないので彼はその行為を嫌がる。
でも時々不安になるのだ。
ー私の何が良くてこんな女と付き合っているのか。
私には大我を繋ぎ止めるほどの魅力がない。
かといって、家事の面で役に立てるかと言われればそれもできない。
考えれば考えるほど分からなくなる。不安になる。
大我はどうして私を選んでくれたの?
どうして私を求めてこないの?
疑問と我儘が同時に私の中に浮かんできて、少し混乱する。
「一花?」
愛する人の声。
「大丈夫か?辛いのか?」
『ううん、大丈夫。』
優しい彼はこう言うと、決まって私の頭を撫で微笑んでくれる。
「ならいいんだ。」
私はこのまま彼に甘えたままでいいのか。
「魚も焼けたし、一緒に食おうぜ。」
その答えは簡単には見つからなさそうだった。