第8章 お風呂

仮にも好きな女に触れるんだ。

…俺のそれが反応しないはずがない。


「あ、あのよ…。俺もちょっと言いたいことあるんだけど、いいか…？」

『…どうしたの。』

「そ、その。俺が…俺が洗うわけじゃん。」

『…うん、そうだね。』

「だから、その…。勃っちまうと思う…。」

『何が？』

言わせんのかよ…！

「だから！あの、お、俺のが…だよ。」

すると、一花は弾かれたように顔を赤らめ俺から目を逸らす。


「勘違いしないでくれ！だからといって、そういう気持ちがあるわけじゃなくて！全く無いわけでもねーけど…。とにかく！なんつーか生理現象なんだよ！」

俺は一気にまくし立てる。

「だから、気にしないでくれるとありがてー、つーか…。まぁ、そういう事だ。…すまねぇ、急に大声出して。」

『だ、大丈夫。』

少しの沈黙の後、一花が静かに口を開いた。

『…ごめんね？大我くんだって男の子だもん、しょうがないよ。…だけど、私はそれを受け止めてあげることができない…。』

ポロポロと涙を流し始めた。


ーそれは愛し合う者達にとっては、あまりにも大きな代償であった。


確かに俺たちは身体を繋げて愛し合うことができない。

だけど、一花を想う気持ちは誰よりも強い。
その自信が俺にはある。

「そんな事気にすんじゃねー。俺はお前のことが他の誰よりも好きだ。一花の代わりなんていない。俺はお前だから好きになったんだ。」

『大我くん…。』

一花の頬を優しく包み、目を合わせてはっきりとそう言う。

「今さらそんな事気にしねーよ。お前は俺に全部預けてくれればそれでいい。分かったか？」

『うん…、ありがとう。』

俺の手に自分の手を重ね、控えめに微笑む一花。

何にも代え難いほど美しかった。