第8章 お風呂
『ごちそうさまでした。』
「よかった、全部食えたんだな。」
『うん、すっごい美味しかった。』
俺と一花は夕食を食べ終え、しばらくの間テレビを見ていた。
途中、一花が甘えるように頭を肩に預けてきた。その仕草が堪らなく愛しくて、小さな頭を撫でた。
「…どうした?」
『…なんとなく。少し不安になったの。』
「そうか…。」
それだけ聞くと、俺も不安になってきた。
一花には元々どこか消えてしまいそうな儚さがあった。
そんな彼女の存在を確かめるように、顔にキスを1つずつ落としていく。
おでこ、鼻、頬、瞼。どこをキスしても温かくてひどく安心した。
微妙な触れ合いがくすぐったかったのか、少し身をよじる一花。
動かないように後頭部を抱え、唇を合わせた。
『…んっ。』
何度か角度を変え口付け、柔らかい果実のような唇を味わう。
控えめに服を握る手が、俺に縋っているようで自分の中に蠢く独占欲が少し満たされた。
『んぅ…、あっ。』
少し夢中になり過ぎたようだ。苦しそうに息をする一花を見て、急いで離れる。
「す、すまねぇ!ついつい盛っちまった…。その、苦しくねーか…?」
『うん、大丈夫。大我くんとのキス…、き、気持ちよかったよ?』
「えっ…?」
こいつ、なんて言った?
ーードクンっ
ひどく興奮しているのが自分でも分かる。
一花は時々こちらを驚かせる発言をする。
今だって、俺の思わぬ発言で俺を煽る。
「そ、そうか…。」
『大我くん?…どうしたの?』
「何にもねー…。男の事情ってやつだ。」
『ほんとに…?』
「ほんとに!…だぁー!もう、風呂入ろうぜ!そうだ、そうしよう!」
すると、一花は突然深刻そうな顔をした。
…何か余計なこと言っちまったか?
『火神君、』
「ん、どうした?」
なるべく安心させるように頭を優しく撫でる。
『私、一人じゃお風呂に入れなくて…。だから、』
何だそんなことか。
「それなら心配すんな。先生からちゃんと聞いてる。」
…あっ、でも1つ大きな問題が。