第19章 翌朝
さっきからやたらとご機嫌な一花を、椅子へと運ぶ。
一花に触れると思い出す。
一花の肌の感触や温かさ。
…本当に抱いたんだな。
改めてそう実感した。
『大我、どうかした?』
自然と上目遣いで聞いてくる一花。
狙ってんのかと言いたくなるような可愛さに若干、下半身が疼いた。
…何考えてんだ、俺。
一花に限ってそんな事は無いだろう。
まだ俺を見て首を傾げてる一花のおでこに優しくキスをする。
「なんでもねぇよ。」
頭を優しく撫でれば少し目を細めて笑う一花。
いつもの柔らかい髪に安心感を覚え、俺まで笑顔になってしまった。
手を離すのは少し名残惜しかったが、一花の話を聞くために俺も一花の向かい側へと座った。
「それで、今日は何かあったのか?」
そう聞くと大きな瞳をキラキラさせて話し出す。
『そうなの!あのね、今日赤司君から連絡があって…。来週の月曜日と火曜日空いてるかって大我にも聞いてって言われたの!』
まぁ、うちの店は月曜が定休日だから問題ないとして…。火曜は久し振りに休みにするか。
「そうか。多分空いてるぜ。」
『本当!?じゃあ、早速赤司君に連絡しなくちゃ!』
「その前に、一花、その月曜と火曜に何があんだよ?」
『あぁ、そうだね。教えるの忘れてた。』
「おい。」
『アハハッ、ごめんごめん。…あのね、赤司君が新しく旅館をオープンするんだって。だからその旅館の一番初めのお客さんとして来ないかって。』
…やっぱり赤司はすげーな。
まぁ、たまにはそういう所でゆっくり過ごすってのも悪くはねぇな。
最近、一花とも出掛けれてないしな。
「いいじゃねぇか。久し振りに一花ともゆっくりしたいしな。」
『ふふっ、そうだね。私も楽しみ。…あっ、そういえば黒子君達も来るんだって。』
「…マジかよ。」
『嫌なの?』
「いや、黒子達に会えるのは嬉しいけど、てっきりお前と二人きりかと思ってたから…。」
『ふふっ、残念でした。』
悪戯っぽく笑った一花は、そっと腕を伸ばし俺の手を握った。