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死の舞踏

第6章 因果


「其れもそうですねえ」ケラケラと笑うポートマフィア専属研究員、三浦。
「何せ我が首領は疑わしきは全て罰せよ!と云うのが信条ですからねえ」
三浦の云う通りだった。現在のポートマフィアの首領は、謀反を計画した者がひとり居る、というだけで周辺の無辜の民をも殺してしまう過激さを持っていた。
逆らう者は殺す。殺し尽くす。其れが『夜の暴帝』たる現在の首領だった。

「ところで三浦君、頼んでいた資料は持ってきたかね」
「はい、こちらに」すすと差し出されたのは、分厚い紙束の資料。
ホチキスで止められきれない其れらを受け取ると、森はパラパラと資料を見て、確かに受け取ったよ、と云った。

其れらは三浦が今まで実験してきた異能力者ーー橘優凪に関する資料だった。

「此れで君の仕事は終わりだ、三浦君。後の『実験』は私が引き継ごう」
「資料と引き換えに、私が彼女に殺されぬ様手配するーーそう云う手筈ですからねえ。頼みましたよ」
三浦はそう云い残して、診療所を去っていった。

森の手元には、三浦の記録した膨大な量の資料が残されていた。
森は数枚に目を通すと、此れら全てを見るのは骨が折れそうだ、と苦笑した。

「森さん、取引は終わったの?」ふと、気付くと診療所奥のテーブルに1人の少年がいた。
「嗚呼、居たのか太宰君。今まで何処にーーって君、ずぶ濡れじゃないかね!早く服を脱いで着替え給えよ!」
「何処に、ってちょっと川で入水自殺してただけだよ。入水は大変だったよ。苦しい上になかなか死ねない。おかげでまた死にそびれた」そう云って太宰は溜息をついた。

彼の衣服ばびっしょりと濡れ、羽織った黒コートの裾からはぽたぽたと雫が落ちている。太宰の髪の毛も濡れきったままで、ぴったりと顔面に張り付いていた。

「あーーもう!!如何して君はいつもいつもこう死にたがるのだね!!」森は慌ててタオルを何処からか持ってくると、太宰の体をグイグイと吹き始めた。

「ちょっと、痛いよ、森さん。あと声が大きいよ…たかだか自殺未遂程度じゃあないか」「世間一般では自殺未遂『程度』とは云わないんだがねえ…まあ私が普通を説くのもおかしな話だが」森はタオルを手渡した。太宰が仕方なく其れを受け取り、体を拭いた。

「ところで森さん。あの子、此処に来るの?」漸く身体を拭き、衣服も着替え終わった太宰が尋ねた。
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