第6章 因果
「何か、飲み物はいるか」確かによく寝たおかげか、優凪の喉は乾いていた。
「はい、お茶をお願いします」
「分かった」織田作が立ち上がり、部屋を出る。院内の自販機にでも行くのだろう。
織田作を待つ僅かな間。ふわぁ、と軽く欠伸をしながら優凪は大きく伸びをした。
その瞬間、コンコンとドアが叩かれる音がした。織田作だろうか。
「どうぞ」
「邪魔するよ」
入ってきたのは織田作ーーでは無く、白衣を来た中年の男だ。
髪の毛をオールバックにして纏めている。もしやこの人が自分の担当医だろうか。
「こんにちは。もしかして担当医の方ですか?」
そう問うた瞬間、男の後ろからひょこっと何かーー正確に云えば見覚えのある少女が現れた。
「あら、オニに見つかっちゃったわね!」そう云って天使の微笑みを振りまく少女。以前襲撃された時に出逢った美少女だった。
「貴方……先日の」何と云えばいいのやら。途切れた言葉が空を漂った。
「もう、エリスちゃん!君が見付けたと云って居たのは彼女だったのだね!?それならそうと早く云ってくれたまえよ〜!!」
医者(?)の男がエリスと呼ばれた少女を抱きあげようとする。が、すんでのところでエリスがさらりと躱す。真紅のドレスのフリルがふわりと揺れた。
「リンタロウに内緒でオニごっこした方が楽しいもの!云う訳無いじゃない!」「んもう!なんでそんなに意地悪何だね君は〜〜」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ2人。此処は仮にも病室なのだが。
再びドアが開かれた。
「…何の騒ぎだ?」今度は織田作だった。
白衣の医者と思しき男性と美少女の組み合わせ。織田作も言葉に詰まったのか、暫し沈黙した。
「優凪。頼まれてたお茶だ」此れで善いか?と織田作が不審者2人組をスルーしてペットボトルのお茶を差し出す。
「有難うございます、織田作さん」優凪は有難く受け取る。
お茶をひと口飲んで落ち着くと、「うおっほん」と大きめの咳払いをした。
するとぎゃあぎゃあ騒いでいた2人が一斉に口を噤んだ。
「ーーエリスちゃん、少し外したまえ。そこのーー」
「織田です」
「織田君。この子と一緒に外で待ちたまえ」
「はい」
織田作がエリスを連れて出ていく。去り際にエリスは優凪を見てニコッと笑った。つられて優凪も笑みを返す。