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死の舞踏

第6章 因果


「ですが、私の異能力はまだ未熟です。迚も戦闘に使える様な代物ではありません」
「そうだね。でも上はそうは思わなかったーー何の才能も両親から無いと見放されていた君に、ポートマフィアは『殺しの才能』を見出した。そんな所かな」
「殺しの才能…」

「眠る前に、両親について伝える事がもう1つあると云っただろう?
君には判るかい」太宰は問うた。
「……私は異能力の実験をさせられてました。両親も殺す必要となるとーー私を連れて逃亡を企てた、とか」
「察しが善いね。ご両親の遺体回収と共に、1週間後に北へ逃げる旅行券3枚分等々…君のご両親は『実験台』にされてた君を助ける算段だったのだろうね」

「両親が、ですか」きっと薄々気付いて居たのだろう。橘総合病院の地下には実験室がある。人体実験室が。
そして其処に私も出入りしている事が誰かの耳に入ればーー院長と看護師長である両親にも伝わった筈だ。

「才能が無いと解っているのに?」
「そうだよ」くぁあ、と太宰は詰まらなそうに欠伸をして、優凪の瞳を見詰めた。
「両親とはそう云うものらしいよ。僕は知らないけど、一般的にはね。少なくとも君のご両親はその程度には君を大事にしていたんだろうね。
ーー質問はもう善いかな?」手を離してくれたまえ、と太宰が云った。

「あ、はい…」優凪は太宰のコートの裾から手を離した。
「じゃあまたねー」太宰がぼやっとした声で云った。

太宰が居なくなり、部屋には優凪と織田作の2人きりになった。暫くの間、沈黙が場を制した。

先手を切って口を開いたのは、優凪だった。
「織田作さん、今日の仕事の方は大丈夫なのですか?」
こないだの猫探しとか、落書きの犯人探しみたいな…と呟いてハッと気が付いた。織田作さんは人を『殺す』仕事をしていない??
「今日の仕事はお前の様子を見る事だ」端的に織田作は答えた。
成程、では既に今の時点で仕事は遂行しているという訳か。
合点がいったと云う風に優凪は手をポンと叩いた。

「その仕草は何だ?」
「あ、これですか?納得した時はこう云う風に感情を表すんですよ」
優凪はもう一度開いた左手に、握った右手をポンと叩くように押し付けて離した。
「そうなのか」知らなかった、と織田作。
「そうなんです」と優凪。
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