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死の舞踏

第5章 追懐


「君は矢張り面白いね!」そう云ってひとしきり笑った後、笑い過ぎて苦しいと云いつつ胸元に手をそっと忍び込ませた。

その瞬間ーー私の脳裏に《映像》が流れた。
目の前の少年が銃を取り出し、私の心臓を撃ち抜く。私は血を流し倒れる。

映像が止んだ瞬間、私はしゃがんだ。銃砲の音と同時だった。

「……矢張り君は面白いね、織田作。君なら私を殺せるだろうーー殺しをしない信念なのが残念だよ、全く。
確か数秒先の未来を見る異能力だったね?私の調べた通りだ」
成程、この少年は試したのだ。私の異能力を。
「ーーああ、そうだ」私は頷くと、再び立ち上がった。

目の前の少年は試すような真似をして済まないね、と云うと懐に銃をしまった。其れにしても優凪といい、この少年といい、恐らく10代前半位の年頃の少年少女が、こんなにも大人びているものなのだろうか?

自身の過去故に世間ずれしている自覚はあったが、迚も普通の子供とは思えない言動だ。

「さて、そろそろ話を戻そうか。君はあの両親の死体を見たかい?」
「いいや」
「彼等はマフィアの報復方法で殺されていてね。唯、残念な事に此方側ーーポートマフィア内では優凪が異能力者である事を知っていた者も、彼女の両親を殺したと名乗る暗殺者も居ないのだよ。死体の調査時に、氷の破片が見つかったから分かっただけだ。
之がどう云う事か、分かるかね」

「犯人がマフィアの犯行に見せかけたのか?」
「基本的にはそうだね。マフィア内では最も怪しいのはいちばん身近に居て、常に同じ屋根の下にいた橘優凪じゃないかって話になってるのさ」
私は沈黙した。ーーあの少女が、果たして両親を殺し、マフィアの報復方法を取ることが出来るだろうか?前者は彼女の異能力なら可能だろう。だが後者は?

「君が思い悩んでる通りだよ。恐らく殺した犯人とはまた別にーー裏で手を引いた『協力者』が居るんじゃないかな。それも優凪ちゃん自らがやった事を本人に忘れさせる異能力持ちのね。
マフィア上層部は優凪ちゃんの犯行って事で決着を着けたい所みたいだけどーー僕もそこが気になってね。本人の言動からして本気で見覚えがないみたいだし」
太宰は屋上のフェンスにそっと手を置き、ぎゅっと握った。

「僕はね、『真実』が知りたいのだよ。君もそう思わないかね?織田作。」
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