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死の舞踏

第5章 追懐


「矢張り君の異能力は素晴らしい!!未知の可能性に満ち溢れている!!」男が絶賛する様を、優凪は冷ややかな眼差しで見ていた。

「私が異能力者だと云うのは分かりました。貴方の言う通り、命の危険が無い限り発動しない未熟な異能力である事も。ーーでも何故、私が異能力者である事を知っているのですか?何故私なのですか??父と母はこんなーーこんな人体実験をしている事を知ってーー」そこまで聞いて、はっと我に返った。

男の眼は笑っていなかった。スーッと右手が脳に伸ばされる。
反射で頭を庇おうとしたが、もう遅かった。
ぽろりと、また大事なモノが抜け落ちる音がした。

******

「やあ、益荒男くん」織田作ーーもとい私が病室を出ると、右側に先程の少年ーー太宰治が立っていた。

「いや、優凪ちゃんみたいに云うとーー織田作、かな?少し話をしないかい?」
「…ああ」私は端的に答えると、相手はニッコリと笑った。

「此処で話して聞かれても困るしーー場所を変えようか」
太宰と云う少年に着いて行く。辿り着いた場所は橘総合病院の屋上だった。

「先刻も名乗った通りだよーー僕は太宰治。ポートマフィア御用達の首領の侍医の知り合いみたいなものかな。君についても調べさせてもらったよ。」
「俺について調べるも何も、ただの一介の構成員だ」
それも下っ端の。私は自分で付け加えた。

「ーーいいや、違うね。織田作之助君」太宰治から表情と言う表情が消えた。
「昔、こんな噂があったそうだ。凄腕の少年暗殺者が居るとね。どんなに難しい暗殺も難なくこなす事の出来る、界隈じゃ有名な暗殺者ーー
詳しい事は知られて居ないが、確か彼の名前は『織田』と云ったそうだ」

「それが、どうかしたか」私は内心動揺しつつも、極めて冷静に答えた。

「君みたいなのが何故人を殺さなくなり、ただの最下級構成員に甘んじんているのか。ーー非常に気になるところでね」
何故だい??太宰治の質問に、私は答えなかった。
いいや、答えたくなかった。

「それは、答えなければならない質問か?」
「絶対では無いね」
「なら、答えたくない」

私がそういい切ると、数秒の間を置いて、アハハハハと太宰は声を上げて笑っていた。
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