第11章 〜喫茶ポアロに、事件の残り香〜
動揺しても必死に頭を回転させ、最早これしかないと納得出来る結論がそれだった。完全に拒絶されたわけではない。コナンが無意識のうちに、ホッと安堵して肩の力を抜いた。その時、麻衣の向かいの席からひょっこり、二人の男達が顔を覗かせてきた
「…ん?麻衣嬢あの人達は知り合い?」
「ええ、最近何度かお会いしてます。先週も偶然会いました」
「…そうなのか。遭遇率がずいぶん高いんだな」
先に発言したのは、紫の瞳でアホ毛が特徴的な、長い黒髪を赤い髪紐で纏めた少年。そして麻衣に応えた少年の方は、襟足までの綺麗な銀髪や銀色の瞳、寡黙な雰囲気の顔つきが特徴だった。因みに二人とも幼げであるが、容姿は美麗で少し似ている
そんな彼等の二対の目が、まずはコナンを捕らえて細まった。ドクリ、と心臓が嫌な脈をうつ。清光達とは別人なのに、麻衣の関係者というだけで緊張感を持たずにいられなかった。蘇る恐怖の記憶と、自分が抱える罪悪感。ほんの一瞬見られただけで、すぐに彼等は蘭達に視線を移した
「初めまして、俺は粟田四郎!渾名が鯰尾って言います。それで隣が…」
「……俺は粟田義輝、渾名は骨喰と呼ばれている。四郎の兄弟だ」
そう言って、鯰尾の元気な自己紹介の後、骨喰が感情の見えない声音で喋る。すると自然に関わる形になって、コナン達も自己紹介していく流れになった
「毛利蘭です」
「鈴木園子って言います!」
「僕の名前は世良真澄だよ」
「あ、えっと…ボクは江戸川コナンだよ!」
何故かコナンにしては珍しく、引きつった笑顔でドギマギした話し方をする様子に蘭達が顔を見合わせた。しかし鯰尾と骨喰は気にした風でもなく、唯一麻衣だけはコナンをジッと観察して、やがて彼に手招きをした。当然それに疑問を抱きつつも、コナンが少し遠慮気味な足取りで彼女の傍まで行ってみれば、何故か身長に合わせて上半身を屈めて頭を撫でられた
「それほど緊張せずとも、今はリラックスして大丈夫です」
「え……」
何とも予想だにしない展開に、呆然と麻衣を見上げるコナン。彼女の優しく頭を撫で続けている掌、周囲に聞こえないよう安心させる小さな声、そして気遣っていると分かる眼差しと言葉。途端に申し訳なさが迫り上がって、今度は自分が内緒話の様に小声で彼女へ伝える