第11章 〜喫茶ポアロに、事件の残り香〜
だったらどうやって察したのか。コナンはともかく、沖矢はその場で言い当てられたのだ。理解の範疇を超えている。彼らは『得体の知れないモノ』で深入りすれば危険な相手だ
自分の常識が及ばない存在、自分に解けない謎を持つ存在、自分を尽く拒絶する存在、自分を無視して否定する存在。それがコナン基『工藤新一』にとって、何より受け入れられないものだ。しかし全ては、自分の探偵としての性が招いた自業自得であった───
「……もう、コナンくん!!」
「うわっ?!えっ…な、なんだ、蘭姉ちゃんか…」
思考の沼に沈んでいたコナンは、自分を呼ぶ蘭の大声でハッと顔を上げる。すると心配そうな表情で見てくる彼女に気づき、驚いて動揺したまま「どうしたの?」と訪ねた。この日の蘭は常通り世良や園子とポアロで会うため、お洒落に力を入れてカジュアルな私服を着こなしていた
「もう!どうしたの、じゃないわよコナンくん。最近ずっとぼんやりしてるし、話しかけても上の空だし…」
「あはは、ごめんなさぁい」
眦を下げて本当に大丈夫なのかと言わんばかりに、顔をしかめて気遣いの言葉をかける蘭。コナンは乾いた笑いを漏らして謝っておいた。これ以上彼女に心配をかけて、自分の事で悩ませたくはないのだ。そして誤魔化すために蘭の服装を見て思い出したように一言
「……そういえば、園子姉ちゃん達ともうすぐポアロで会うんだよね?」
「そうなの!コナンくんも一緒に来る?」
「うん!」
いつも一緒に行くからなのか、三人の約束であったが蘭はコナンも食事に誘いにかける。それに勿論のことコナンが頷いて返した。別段、世良も園子もコナンと行動することが多いせいか、特に反対する事も不満に感じることもないのだ。「それじゃあ、行こっか」そう言って、仲良しな姉弟のように差し出された蘭の手を握って返した
*
カランコロン。来客を知らせるドアベルの音に、何やら紙袋の中を近距離で覗きあっていた店員二人───安室透と榎本梓が揃って顔を上げた
「あ、いらっしゃいませ!蘭ちゃんとコナンくん、今日はテーブル席かカウンター席、どちらです?」
「こんにちは安室さん、梓さん。今日は世良ちゃんと園子も来るのでテーブルでお願いします!」
安室と蘭がそんな事務的なやりとりをする中、コナンは不思議そうに梓が持っている紙袋を見た