第10章 〜九十九を祀る社の巫女〜
「じぶんにつごうよく、ことがはこぶなどおおまちがいです。というより、どうしてぼくたちだったんです?もっともたよりにすべきは『けいさつ』です。みこや、せいふのこうむいんより、はるかにかれはみじかなはず」
「「……っ」」
そうして沖矢の苦しい反論さえも、倍返しとして厳しい指摘を受けて終わる。要は自業自得、然るべき機関に頼れと言いたいのだろう。実に全くその通りなので、弁解の余地も無かった二人。図星で言葉に詰まっている彼らを見て、一層清光達の真紅の瞳は底冷えするほど鋭利な眼光で睨みつける
「……まぁ、色々言わせてもらったけどさ。俺達護衛の優先事項、望みは至極簡単な話なんだよね───」
「「っ?!!」」
静かな怒気を孕んだ清光の声が言った。すると次の瞬間、コナン達は全身が恐怖でゾクリと震え上がった。息が詰まるほどの圧迫感が押し寄せ、思わず二人して地面に両膝をついてしまう
「(うぁっ…くそ、何だ?!この殺気の強さは一体?!)」
「(ぐっ…こいつらは本当に此方側なのか?!)」
今まで体験した事ない、自分達の追いかける犯罪集団よりも物騒なモノ。コナン達は本気で命の危機を感じ、本能が逃げろと訴える衝動に喘ぎ続けた。動きたくとも身体がガクガク震え、心臓を握り潰されているような錯覚さえも味わう
「───もし俺達の『宝』に手を出し、私欲に利用し、陰謀に巻き込み危険に晒すというなら。一族郎党、お前達を容赦なく処分する事になる。あの娘達は俺達だけの大事な愛し子だ。生まれたその瞬間から皆で可愛がり、護り続けてきた姫君。我が身を可愛いく思うんだったら、この先邪な感情で近づかないでくれ」
「かのじょにてをだすやつは、こっかとこくみん、たいへいのよをみまもっている『せいぎ』にあだなすぎゃくぞくです。たいざいをおかし、はんざいしゃにはなりたくないでしょう?『とうちょうき』をもちだしたとき、けいこくされたはずです」
「「…っ?!」」
彼らは言われた全てに戦慄を覚えた。『一族郎党』、『容赦なく処分する』という台詞に、沖矢もコナンも愕然となって息を呑む。単なる脅しでない事など、事前の調査で分かっていることだ。そして護衛達にとって、直接肉体に危害を加えなくとも、麻衣を利用する者であるなら外敵として捉えるらしい。否、それこそが忠誠を誓った主人に尽くす護衛達の使命だ