第10章 〜九十九を祀る社の巫女〜
とは言え、ここで逃げ出す行為は二人のプライドが許せなかった。そんな様子を一線引いて観察していた麻衣は、「はぁ…」と大きくため息を吐き出した。けれど特に静止するでもなく、麻衣はそのまま社へ踵を返していく
「…分かりました。無論承知でしょうが、あまり過激な事はしないように」
「はーい。もうすぐ安定が来るから、御付きはアイツと交代するね」
「(……安定?)」
何気なく出てきた、新たな人物名にコナンが反応する。沖田清光と安定という名前に引っかかりを覚えた。重要な事を思い出せそうな気がする。それは沖矢も同様だった。しかしゆっくり思考する暇なく、麻衣は境内の拝殿の横を通って奥に姿を消してしまったし、清光が「さてと、」と話を切り出してきたのだ
「そういえば、糸目の人は名前を聞いてなかったね。俺は沖田清光で、そこの子供は源剣」
「ご丁寧にどうも。沖矢昴と言います」
「!!」
「へぇ、沖矢昴さんね───」
沖矢の名前を聞いた瞬間、清光も今剣も驚いた顔の後に訝しんだ。一層怪しんでくる態度に、コナンはわけが分からず首を傾げた、すると、清光から脅しをかける低い声で衝撃の一言が飛んだ
「───二人して偽名を使って、俺達の主人に近付いたのか」
「「…っ?!」」
「な、何のことかな…?僕たち分からないよ?」
「そうです!偽名だなんてそんな…」
確信を持って偽名だと言い当ててきた清光達に対し、コナン達は驚愕のあまり動揺を露わにする。何故だ、どうしてバレたんだ。ドクリドクリ、と心臓が危機に陥った恐怖で煩く高鳴った。それにハンッと鼻で嘲笑うのは、コナンと変わらない身長の今剣
「あくまで、しらばっくれるつもりですか。まあ、いいでしょう。われわれは、いまのがじじつだとかくしんしてるし、おまえたちがうそといつわりだけであるのは、まぎれもないはなしです。なまえどころか、ようしやせいかくさえもまゆつばものじゃないですか」
「ついでに言うと、お前らすっごく異様なんだよね。血生臭いし鉄臭いし、硝煙の臭いかなりキツいし。何より『死』と『災難』に触れまくって、中身は普通だけど穢れてる」
「……随分な事を言ってくれるな。そう言うお前たちが一体何者だ?」
「えっ…昴さん?!」
あれやこれやと嘘を暴かれ、沖矢は隠すのも無駄と割り切ったらしい