第10章 〜九十九を祀る社の巫女〜
「清光、この様な場所で話すのはよしましょう。とりあえず奥の方で聞きます」
その言葉にハッと男達が顔を上げる。しかし、清光から頑として拒絶する声が飛び出してきた
「主…!俺は反対だからね、今すぐ断るべきだよ!昨日穢れをその身に受けたばかりじゃないか!」
「二度は言いません」
「……っ」
ピシャリ、と強く言い切られてしまって発言に詰まった清光。麻衣は彼の背後から姿を現し、男達に優雅な仕草で会釈する。そうして主人が可憐な容姿と所作で無意識に男達を魅了する姿に、清光が密かなため息をついた。同時に、ほぅと息を呑んだ男達の顔は、赤みが差して瞳もトロンと惚けている。麻衣は安心させる様ににこりと微笑を浮かべて一言
「どうぞ、こちらです」
「(…まあ別に、命に関わるほど酷いモノじゃないしね。こういう主の度胸も大好きだけどちょっと複雑)」
半ば諦めた様子の清光が、一人そんな事を思って肩を落とした
*
流石に本殿は愚か、拝殿と呼ばれる社の中に入るわけにはいかない。三人と一振りは境内の端を通り、手水舎近くの小さな広場に立った。政府役人だという男達は早速、麻衣と清光に恭しく膝をついて片方が掲げる様に木箱を差し出す
「この度は、急な来訪を寛容して頂き誠に感謝致します、
「政府としても突然舞い降りた事態でした。無礼を承知で巫女様のご助力を願いに参拝した次第にございます。此方をご覧下さい」
木箱を持たない方の男が立ち上がって、蓋を塞いでる紐を解いた。次いで蓋が開けられ、その中にある漆塗りの壺に奇妙な札が何十枚と貼られているのが見える。しかし、全てが途中で千切られてたり、殆ど焦げた状態だったりするのだ。麻衣と清光が咄嗟に鼻と口を両手で覆う
「……それは、もしかしなくても呪具ですか?」
「はい。最近の事だそうです。とある政府役人が体調を崩して発狂し、苦しみ寝込んだ末にお亡くなりに。その時所持していた品物がこれらしいのです」
「うわっ、最悪…。死亡沙汰にまで発展するような呪具が存在したわけ?」
思いっきり表情を歪める清光が、不愉快さを隠さず文句を口にする。気まずくなった男達は下を向くしかなかった。麻衣でさえも難しい顔こそすれ、政府の役人である彼らを庇わない。そして彼女は男達に数々質問した