第9章 〜偶然か必然か、縁は導く〜
他の刀剣達も異論は無いのか、各々大包平に背負われて運ばれていく麻衣を心配そうに見遣っていた
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そうして、同日の深夜。麻衣は離れの事務室で敷かれた布団から起き上がって目を覚ます。時間は確認できそうにないが、普通ならみんな寝静まる時刻であるのは察せる。そんな麻衣だが、次の瞬間、背中から大きな衝撃を感じた
「えっ?!」「よかった主さん!」驚いてる麻衣の耳に、女の子のような声が届く。それにハッと正体を気づかされた。元は枕元で座していた刀剣男士に突進されたらしい。腹部に回された幼子のような腕にギュッと力が篭り、麻衣もその手をそっと優しく撫でる
「……乱。皆にも心配をかけました、ごめんなさい」
「も〜、ホントだよ!!気晴らしに散歩に出かけたと思ったら、いっぱい穢れて帰ってくるんだもん!しかも新しく縁結んでさ!」
ぷくうっと頬を膨らませながら、不機嫌そうに不満を訴える短刀・乱藤四郎。愛らしく嫉妬を露わにする発言に、麻衣は肩を竦めて困った様子で笑った。何故なら。まるで幼い女子のアイドルに見える容姿と言動なのだが、その実立派な武人の精神を持ち合わせている付喪神である
神様とは存外、寵愛している者に対して執着が強いのだ
「今日の事は鶯丸達に既に聞き及んでいるのでしょう。事件に遭遇してしまったのは、運の悪い偶然でした…。縁も偶然そこに居合わせた顔見知りと再会したからなのです」
「だとしてもだよ!危うく主さんの外出が禁止されかけるとこだったんだよ?!穢れた場所に大事な主を行かせるべきじゃないって!」
「(……はぁ)」
涙混じりの声で説教をする乱の言葉に、麻衣は無意識に内心で深くため息を溢してしまう。大袈裟で過保護だと言いたい反面、護られている立場を思うと強く跳ね返せない
「───とは言え、貴方の口ぶりから察するに、私の外出は許可されたままなのですね」
「うん。とりあえず、一応はだけどね…」
麻衣が確認するように言うも、返ってきたのは不穏な言い回しだ。しかし、それに何か言葉を発する間もなく、背後から抱きついていた乱が自然すぎる動作で、彼女を再び布団に寝かせた
「さ、それもよりも!夜中なんだし、朝までこのままお休みしてなよ主さん!」